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生きている温泉〜①大分・七里田温泉

入ると、体が喜ぶ温泉がある。
「温泉法」上ではナトリウムやらカルシウムやら炭酸ガスやら、成分や温度のルールを満たしていれば温泉なのだけれど、そもそものところが違う。
生きている温泉と死んじゃってる温泉。
「うちはね、蛇口の水にだって塩素入ってないよ。塩素はキライ」って言ってる宿のオヤジがいたけれど、塩素入れちゃった時点で、やっぱり肌触りは変わってくる。そこのうちは野菜も山菜もシャッキっと元気で、野菜の味がめちゃおいしかったと記憶している。野菜を殺さない水は、おそらく人間の生体も殺さない。そう思う。「酸化還元電位」いわゆる酸化させる力と還元させる力のどちらが強いのか。つまりは錆びさせない力が強い=還元力の強い温泉に入ると肌もイキイキするし、細胞も活性化するし、元気にもなるというわけだ。
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いろいろ行ってはいるものの、最近は記憶がなくなる速度がはやいので、おそらくは還元力が高そうな、気持ちよかった温泉を記しておこうと思う。
先日長湯温泉を取材した帰り、時間があったので七里田温泉に立ち寄った。
取材先のクアパーク長湯からは車で10分もかからない。思った以上に近かった。

集落にはモンペ姿でほっかむりをした農家のおばあちゃんがリヤカーだか屋台を引いている姿があった。同行のカメラマンが、「あ。写真に収めたい」と追っかけていった(結局、おばあちゃんには追いつけなかったけれど)ほど、昔なつかしい日本がそこにあった。

以前訪ねた時(おそらく10年以上前になるだろうか)には「下ん湯」の小さな浴槽に8人くらいは人がいて、めちゃくちゃ混んでいた記憶があったが、「コロナの後は空いているわ」と先客のおばちゃんが行っていた。おばちゃん(おばあちゃんかな?)は熊本県玉名市から2時間30分かけて夫婦2人で立ち寄り湯に来ていた。途中、どこかに1泊しているとのこと。熊本にもいい湯はいっぱいあるだろうに、それらをすっ飛ばして県を超えてやってくるほどに魅力的であるらしい。

「ここが一番いい。長湯にあるラムネ温泉なんて、全然泡がつかないの。最近はここばっかり」。どうやらいろいろ試して、ここにたどり着いたらしい。
30〜40分の間に、2人と一緒だった。

このくらいの混み具合なのは嬉しいが、
施設としたら商売あがったりなのかもしれない。

入ると、10秒のうちに体にあっという間に泡がついてくる。下から下からシャンパンかサイダーみたい泡が上がってくるのだ。ほんとうに微細な泡。耳を澄ますとぷちぷちと炭酸ガスの泡が弾ける音まではっきりと聞こえる。全身アワアワである。最近は温泉に食傷気味の私でも、興奮しまくった。

や、や、や。これは、すごい。
36・4度、体温と同じくらいだから、冷たく感じるかと思ったが、思った以上に温かい。体中の力がほどよく抜けて、脱力状態に。
炭酸ガスが血管に入り込んで、全身をくまなくめぐるわけである。ありがた〜いお湯。

何時間でも入っていたかったけれど、飛行機の時間もあるので仕方なく上がる。
3月、寒いかと思ったが、難なく上がれた。

七里田温泉「下ん湯」は500円。
「木乃葉の湯」の玄関受付で料金を払うと鍵をもらえるのでそれをもって歩いていく。
近くの人は加温している「木乃葉の湯」だけに入る人もいた。セットでの入浴もできる。